今年のばっ旅最終日は、移動時間を考えたらあちこち回れる余裕はなさそうだったので、敢えてゆっくりのんびり行こうということに。朝も8時に起床。旅先で寝坊なんて滅多にないのに、今朝はtellに電話で起こされてしまうし、朝風呂に入る気力さえ湧かなかった。
ばっ旅四国編では候補地にも挙がらなかったが、そういえば「こんぴらさん」にお参りしていなかったなと、本日唯一の目的地を金刀比羅宮に決定。785段もの参道を登るなんて、ばっ旅らしいし、ばっ旅じゃなければわざわざ来なさそうだし。
帰りにお土産を買うか食事をしてってくれれば駐車場代はいらないよという親切なうどん屋のおばちゃんに導かれるまま、何故か屋根付きのガレージに車を停める。親切なおばちゃんは杖まで貸してくれた。普通の観光客は、このおばちゃんに巡り会うまでにどこか違う駐車場に停めちゃうだろうな。だって必死だもん、呼び込みが。半ば強制的。
うどん屋から鳥居のある第一段目まではすぐのところにある。石段の途中、土産物屋が立ち並ぶが、どこも閑古鳥が鳴いている。こういう店って営業成り立つんだろうかといつも不思議に思う。

785段ってどれほどなんだろう。ガイドブックなどを見ると、結構キツいみたいなことも書いてあるので、心して登り始める。画像を見ると、これが延々続くのかと思うかもしれないが、実はそうではなくて、ちょっと登ればすぐに平坦な道が現れ、またちょっと登れば商店やら書院があったりして、息を入れる機会は何度もある。

拍子抜けなほどあっさり登ってしまった785段。足腰がどうこうどころか、少しの息切れもない。お喋りをしながら、参道沿いの景色を楽しみつつ、気がつけば目前に御本宮。ペース緩過ぎたとはいえ、楽勝でした。

お参りをして、「幸福の黄色いお守り」を買って、登ってきた階段をまたえっちらおっちらと下る。その途中、番組収録中の友近に遭遇。友近は同郷だが、今のところ全く縁もないので、意外と華奢なんだなーなどと思いながらすれ違う。

下りもあっさりとクリアし、車を停めさせてもらっているうどん屋で昼食。讃岐ほどコシがない「こんぴらうどん」に生醤油をかけて食べる。味は、まぁ普通。

琴平をお昼過ぎに出発。tellの飛行機は17時。平日だし、下道でのんびりと松山へと走り始める。が、ペースが余りに遅過ぎたので、やっぱり高速に。本当は、時間までに一度ウチに寄り、母の作る餃子をご馳走してあげようと思っていたのだけど、出発前に引いた風邪がさらに悪化しているらしく、断念。
飛行機の時間は迫っていたが、生前の父を知る数少ない友であるtellにお願いをして、一緒に父の墓前に。落ちていた樒の葉を拾い、手を合わせてくれるtell。その背後から、「tellくん来てくれたで。覚えてる?」と父に声をかける。生きていれば、もしかしたら三人で山に登ったりしたかもしれない。各々照れ屋だったり、人見知りだったり、不器用だったりする三人だけど、一緒に山に登れば、男同士深い話もできたかもしれない。父には、tellという存在を、二人の関係を、もっとよく知っていてほしかった。
出発時刻30分前に松山空港に到着。ビデオを回し、今回の旅を振り返りながら〆に入る。空港内のカフェで慌ただしく精算をし、珈琲を半分も飲まないうちに保安検査場へ向かう時間に。以前、旅の終わりに抱いていた感情が急に込み上げてきて、ガラス越しに手を振り、飛行機に乗り込んで行くtellを見送りながら、寂しくて仕方なくなる。

9回目を迎えた今年のばっ旅は、特に波乱もサプライズもなく、良く言えばスムーズ、別の言い方をすればイージーな旅だった。今回に限っては、旅というより、旅行に近い。互いの変化を理由に挙げれば納得もいくが、やっぱり少し物足りない気がしなくもない。でも、今回は旅そのものより、tellとの交流に重きを置いていたわけだし、その意味では充分な成果があった。何より、今年も続けられたことに大きな意義がある。
来年はいよいよ節目の10周年となる記念回。変わったことをやる必要はないけど、ばっ旅らしいばっ旅ができればいいなと思う。そして11年、12年と、これからもずっと続けられますように。