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父からの手紙
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帰宅すると、先日書いた礼状の返事や、各種料金の明細書などに混じって、見慣れた字で宛名書きされた封書が届いていた。いつもその茶封筒には、新聞の切り抜きや、書籍のコピーが同封され、読ませたい箇所には赤線が引かれ、たまにコメントが一言添えられていた。その内容のほとんどが、雇用と地震と自動車、そして山。中でも圧倒的に雇用に関する記事が多く、物言わぬ圧力に溜息をついたものだった。

もう二度と届くはずのない父からの手紙に、どんな奇跡が起こったのだろうと胸が騒いだ。懐かしく、愛おしい文字で書かれた宛名。裏には実家の住所と父の名前が書き添えられている。靴を脱ぎ散らかして部屋に駆け上がり、少しだけ震えた手で、ゆっくりと慎重に封を切った。

冷静になれば、分かることだった。

入院中の父が仕掛けたトリックだとか、本当に天国から届いた手紙だとか、そんなドラマチックな奇跡が、起こるはずなんてないわけで。

手紙は、母からだった。

何通分か宛名書きだけしておいた父の封筒が、まだ引き出しの中に残っていたらしい。

前に頼んでいた、実家にある「さくらそう」の品種全ての名前が、列記されていた。冬空の下、凍える寒さで悴む手を摩りながら、丁寧に植え替えた全33品種。鉢数にしてなんと660鉢のそのさくらそうは、小春日和が続いた先週、一斉に芽吹いたらしい。順調にいけば、4月上旬には色とりどりの花々が花壇に咲き誇るはず。

父が宛名書きした封書の中から、母の手紙が出てきて、それは母のちょっとしたイタズラ心だったのだろうけど、当たり前のように届いた父の手紙は、もうこんな形でしか、いやこんな形でさえもう来ないのだと思うと、気持ちは重く沈んだ。だけど母が引き出しからこの封筒を見つけた時の心情を思い浮かべると、ただただ悲しくて。

目の具合が良くない母に、一度東京の眼科で受診をと薦めているのだけど、今度はデイジーの植え替えを180鉢しなければならないからと言う。父も大変な財産を母に遺したものだ。
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