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シャガールの『誕生日』
まだ明けきらぬ夜空には大きな柄杓が浮かんでいる。今日は確か「ふたご座流星群」が極大。ピークから2時間ほど過ぎてしまったものの、いくつか見られるかもと寒空を見上げるが収穫なし。旅前に風邪を引くのもバカらしいので、リュックを背負って駅に向かう。
小田急線で登戸まで出て、初めて「青春18きっぷ」に押印してもらう。ローカル電車を何度も乗り継いで、10時間以上もの長旅。国内海外問わず一人旅には慣れているはずなのに、なんだろう、この初々しさと甘酸っぱさたっぷりの旅立ちの心境。小学生の頃初めて一人で電車に乗って旅に出たときの気持ちに近い。そのときは松山から大洲という、高速ICでいえば3つ分くらいの短い距離だったが、旅を終えて無事帰宅できたときの達成感ったらなかった。
てことで、笑顔の駅員さんに見送られ、三十路を超えてなお、まさに「青春」18きっぷの旅が始まった。
南武線で南下し、川崎で東海道本線に乗り換える。駅のホームから見える工場に、オレンジ色の朝の光が差す。ぴりりと冷えた空気が頬に気持ちいい。デジカメで写真を撮ったり、時刻表を捲る回数の多さを考えて手袋は不要と判断したが、「ま、あってもよかったかな」と少し後悔。昔流行った指先がちょん切れたヤツとかコンビニで売ってればいいのに。
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次の降車駅は熱海。少し時間があったので、構内のドトールで珈琲とベーグルを買い、駅前広場にある足湯「家康の湯」に浸かる。
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朝の清掃を終えたばかりの浴槽に、ぽかぽかと温かい湯が注がれている。胃袋に熱い珈琲を流し込み、寒さも眠気も吹き飛ぶ。
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そういえば数年前、浜松在住の人と熱海で待ち合わせたことがあった。麗かな春の日だったが、もちろん海の水はとても冷たくて。なのにウエットスーツも着ないでどんどん沖まで泳いでいって、遊泳可能区域ギリギリのところで右へ左へと延々遠泳をするオジサン。そんな光景を、浜辺でお弁当を食べながら眺めていたのを思い出した。
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タオルで足を拭いてホームに戻ると、浜松行きの電車が滑り込んで来たところだった。途中、流れる車窓に雄大な富士が現れる。富士駅は新幹線の新富士駅よりも富士山に近い。夏はごつごつした岩肌ばかり目立つ近景にガッカリするが、冬の冠雪した富士山は間近で見ても本当に美しい。
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それにしても、熱海から浜松までは遠い。先述の待ち合わせの際、ウチから熱海と、同県の浜松からじゃ少し不公平な気もしていたが、静岡は半端じゃなく東西に長いのだ。おかげで本を一冊読み終えてしまった。
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浜松からは乗換えがとてもスムーズで、せいぜい駅の売店を立ち覘くくらい。浜松→豊橋→大垣→米原。京都に到着したのが16時。ある事情により、この時点で朝にはフルだった携帯の充電が切れる。奈良に向かうには時間も早いので、京都で携帯を充電がてら夕食を取ることにした。本当は寺の一つも参拝できればよかったのだが、既に陽は落ちつつある。
京都駅のクリスマス・イルミネーションがとても綺麗。てか、まず駅自体が近未来的で非常に美しい。調べてみると、設計は札幌ドームの原広司。実は翌日大阪で阪急電車に乗ったとき、車窓から見えた「なんじゃありゃ~」と思った梅田スカイタワーも彼の設計によるものだった。にしても近未来な京都。なんかしっくり来ない。
折角京都に降り立ったのに、入った店が携帯充電のための「au」と、その待ち時間を潰すためのパチンコ屋と、夕食のための「王将」というのが悲しい。一人だし、時間的余裕もなかったからいいっちゃいいんだけど。
京都で学んだこと→★京都の「au」は充電に30分200円という法外な料金を請求してくる。★京都の「王将」には各テーブルに一つちゃんとソース注しがある。東京では炒飯にソースをかけて食べると言うと白い目で見られがちだし、そもそも「王将」にソースを置いてない!店員さんに「ソースありますか?」って聞くと変な目で見られてしまうし。炒飯にソースをかけて食べると美味しいし、蜜柑をお風呂に浮かべて温めて食べても美味しいんだってば。
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とっぷりと日も暮れて、奈良駅に着いたのは19時前。商店街を抜けて、猿沢池が見えたところで奈良公園に入る。ライトアップされた興福寺五重塔が昔見た記憶のまま、右手にズズンと聳え立つ。興福寺といえば阿修羅像。あの頃はまだ小学生だったし、薬師如来や阿弥陀仏像より阿修羅像や千手観音に興味津々だった。
見上げると、空にはとんがった月とカシオペヤ座。うーん、絵になる。でも折角周囲に高層ビルもなく、公園の敷地内にあるのに、ライトアップはお月様に任せればいいんだ。そうすればもっと星空が近く、悠久のときを感じることもでただろうに。
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公園を抜けて、ついに今回の旅の目的地「奈良県立美術館」に到着。明日で会期が終了する「シャガール展」。今日は土曜日だし、昼間は相当混雑したのでは。金曜土曜は21時まで開館しており、ナイトミュージアムがお奨めという情報に感謝。とても静かに、ゆっくりと鑑賞することができた。
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同じような日程で上野でもシャガール展が開催されていたのだが、遠路遥々大和路まで来たのは、ニューヨーク近代美術館からオリジナルの『誕生日』が来ているから。青山のアニヴェルセルにあるのも、ドイツのグッゲンハイムにあるのも模写されたもので、よく見ると微妙に違いがある。何より、描き手の心情が全然違うはず。彼の誕生日に、最愛のベラが花束を持ってお祝いにきてくれた。そのときの天にも昇る幸福感で、絵の中の画家本人は、まさに宙に舞い上がっている。ファンタジックなのに、ストレート。これほどあたたかな愛に満ちた作品を他に知らない。
入り口で音声ガイドを借りて、一点ずつゆっくりと鑑賞した。順路を辿り、そのフロアに入った途端、『誕生日』の絵が一直線に視界に飛び込んできた。絵が壁から浮き出ているような錯覚に陥ったのは、ライティングと額のガラスに仕掛けがあったのだが、それを考慮に入れても、その絵の存在感は他を圧倒していた。どれくらいの時間立ち尽くしていたのか分からないけど、その絵が醸し出す幸せなオーラに包まれたその時間は、至福のひとときだった。
他の絵を見た後も、次のフロアに移動した後も、何度も引き返しては『誕生日』の絵の前に立ち戻り、名残を惜しんだ。
音声ガイドを返却し、物販フロアへ。ポストカードや栞など手に取りながら、一番大きなサイズで額入りの『誕生日』が気になって仕方がない。5000円程度のものは買って帰ろうと決めていたが、モノが全然違う。吸い寄せられるようにして、絵の前に立つ。フロア内には他にも大勢のお客さんがいたのに、責任者と思わしき女性は迷わず声をかけてきた。今回を逃すともう二度と日本国内でこの絵を手に入れることはできないだろう。それは彼女に言われるまでもなく想像に易い。この絵との出逢いは運命的であり、今ここにいるのは必然だ。
この絵がもたらしてくれたものの大きさを思えば、買わないわけにはいかなかった。今の自分には不釣合いなほど高価な買い物だ。しかし、この絵は絶対買うべきだし、買わなければ間違いなく後悔する。今分不相応でも、釣り合わせるために努力すればいいのだ。そう納得させて、書類にサインをする。
先月のmasterpeaceのライブで、『最後の約束』を販売する際の特典として『誕生日』のポストカードをつけたのだが、そのために10枚ほど郵送してもらえないだろうかとお願いしたのは自分なのだと、手続きを終えてからその女性に打ち明けた。彼女はそのことを覚えていてくれて、そこにいた販売スタッフみんなに「あの人よ」と告げて回った。みんな「来てくださったんですね」と歓声を上げ、その女性自身も「どんな作品なのかしらねって話していましたのよ」と相好を崩した。用意してきた『最後の約束』のCDを渡すと、「みんなで聴かせてもらいます」と喜んで受け取ってくれた。嬉しかったな。
美術館を後にしてからも興奮は冷め遣らず、tellに電話をした。「いい買い物をしたね」と彼も喜んでくれた。ホテルに空室はなく、漫画喫茶で夜を明かすことにはなったが、とても気分のいい夜。奈良まで来て、本当によかった。
Secret
(非公開コメント受付中)

☆イーストエンドさん
イーストエンドさんのコメントを読むと、あー頑張って書いた甲斐があったなぁって思います。
いつもあったかい言葉で励ましてくださって、本当にありがとうございます。
どうぞ、18きっぷの旅二日目にもお付き合いくださいませ。
連れていかれました!
これから踏み入れる旅路にワクワクして、
流れる景色を眺めながらさまざまな思いを馳せ
非日常感と異邦人的な感傷にキュンとなり、
電池切れの現実感にウンウンと頷き、
最後に人の「つながり」にホッっとひと息。

読んでいたら、君と一緒に旅をしている気になりました。
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Author:ryuu
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