朝弱くても旅先ではアラームより早く目覚めたりするものだが、流石に今朝は2度寝してしまった。
予定より1時間ほど遅く起きて、シャワーを浴び、tellを起こす。
朝食もろくに摂らずにホテルを出て、タクシーを拾ってソウル駅へ。
ここからKTXに乗って、大邱(テグ)へ向かう。
駅で買った海苔巻きが案外美味かった。

2時間ほどで東大邱駅に到着し、ここからスタジアムまでは無料のシャトルバスが出ている。

舗装の悪い道をびゅんびゅん飛ばして20分。
昨日開幕した世界陸上が行われているテグスタジアムに到着。
オリンピックやワールドカップなど、こういう世界的なスポーツイベントに、一度は来てみたいと思っていた。

本当は、女子100M予選に登場する福島選手を応援するつもりだったのだが、寝坊したせいで間に合わず。
本日の見どころといえば、夕方以降にボルトが出るけど、そこまで長居するのもどうだろう…と、tellと悩む。
が、何はともあれ入場券を買おうとチケット売場に並ぶ。
すると、わらわらと怪しげなオッサンたちが集まってきて、何やら席がどうのこうの言ってるらしい。
どうもダフ屋っぽいので相手にはしなかったが、よくもまあ正規のチケット売場前で堂々と。
チケットを手にして、とりあえずスタジアム内に入ろうかと思い、プログラムを広げる。
そしてここでようやく、この大会には午後の部というものがないということに気づいた。
午前中の競技が終わったら、夕方まではブランクタイムなのだ。
そう言われてみれば、チケットにはEvening Ticketと書いてある…。
どうりで人がぞくぞくとスタジアムから離れていくと思った。。
ということで、やっぱり、というかついにここで、ばっ旅らしさが。
事前に下調べとか全くしないもんだから、こういうことも当然起こりうる。
こういう事態をどう楽しむかが、ばっ旅の醍醐味だ。

スタジアムにいても仕方がないので、今来たばかりだけど、再びバスで東大邱駅に戻る。
そこからタクシーを拾い、少し離れた場所にあるインタープルゴホテルへ。
朝から海苔巻き1本しか食べていなかったので、ホテル内のレストランでプルコギ定食を食べる。
そして夕方まで、併設された外国人専用カジノへ(好きだね~)。

プルコギは美味しかったし、カジノの受付嬢はとっても可愛かったし、バカラは2人揃って勝利。
ばっ旅で起きるハプニングは、いつもこうやって結果的にラッキーなエピソードに変わることが多い。
しかも、後で振り返って、それが一番印象深く忘れ難い思い出になっていたりするから面白い。
インタープルゴホテルからもスタジアム直行のシャトルバスが出ていて、これまたラッキー。
気分上々で、スタジアムに戻る。
昨日までは、福島を見たら夕方まではいないかもなんて言っていたけど、この流れなら話は別。
折角韓国まで来て、世界陸上見るんだし、今夜100Mの決勝を走るボルトを見ないなんてどうかしてる!
うん、間違いない!!

スタジアムの中に入ると、世界大会独特なんだろうなという、なんていうか、ちょっと上手い言葉が見つからないのだけど、オープンというか、グローバルというか、あぁ、やっぱりなんて言っていいのか、とにかくスタジアム全体を包むその雰囲気に圧倒され、直後、テンションが一気に上昇した。

指定された席で大人しく見る気になどとてもなれず、許容エリア内の一番いい場所へとぐんぐん進む。

その間にもプログラムは進行し、すぐ近くのトラックを選手たちが次々と駆けていく。

4コーナーから直線に入る手前の後方右手に陣取ると、早くもボルトが姿を見せる。

本物だし!
すぐ目の前にいるし!

これから100Mのセミファイナル。

リラックスして、軽く流して、余裕の1着通過。

タイムは10秒0…見えんっ!

10秒05でした。

あの走りなら決勝、もしかしたら世界新もあるんじゃないか?
いや、きっと出る!
決勝は20時45分。
本日最後の種目になるけど、これ終わって帰ってたらソウルに着くの遅くなっちゃうけど、こりゃ帰るわけにはいかんでしょ。
ということで、そうと決まればじっくりと腰を据えて、思いっきり世界陸上を楽しむことに。
ラッキーなことに、今日はアリソンも走った。
女子400Mのセミファイナル。楽勝。
ひょっとして彼女は400Mも制するのか。

プログラムも後半に入り、観客も盛り上がってウェーブが始まる。
何度も、何度も起きる大きな波。
国籍を問わず、世界中の人々と一体になる瞬間に大興奮。
世界陸上、来てよかった!!

こんなシーンや、

こんなシーン、

こんなシーンも間近で見られて、何度も何度も胸が熱くなった。

興奮も最高潮に達し、いよいよ再び、あの男の登場。

終始余裕な表情で、これは本当にやってくれる。
ばっ旅で、ボルトが男子100M世界新記録を更新する世紀の瞬間を目撃することができる。
そう強く信じることができた。

でもこの直後、彼はやってしまう。
誰もが固唾を飲み、手を合わせ、静けさの中で祈っていたのに。

でも彼が「So easy!!」と言いながら全身で悔しがる姿を目の前で見て、「なんだよ~!」とは思わなかった。
残念だったけど、もしフライングしなかったら、本当に世界新を出してたんじゃないかと本気で思うけど。
でも今日のあの一瞬のために、自らの一番の課題だったスタートを改善しようと必死に努力してきたわけで。
最も悔しいのは、他の誰より自分が一番悔しいわけで。

彼の悔しそうな姿を目に焼き付けて、スタジアムを後にする。
あれはあれで、世紀の瞬間だったことに違いはない。
ボルトには悪いけど、何年か後、いやこれからずっと、あの瞬間を目の前で目撃したことは、ちょっとした自慢になるだろう。
それはこの先、さらに彼が飛躍し、次々と記録を塗り替え、それが今回の悔しさをバネにしているから、ということになるだろうと、強く信じられるから。

駅に向かうシャトルバスを待つ列はとても長く、1時間くらいは待たされた。

しかも帰りのKTXは席が取れず、約2時間立席。
ぐったり疲れてはいたが、ipadを開き、ソウル駅到着まで原稿を読む。

そして、今夜もカジノへ。
大人しく帰ればいいものを、今日はヒルトン併設の「Seven Luck」へ。
途中までいい感じで勝っていたのだけど、流石に朝方集中力が切れてオケラ。
勝っていたときにその勝ち分でフロントへ行き、ヒルトンの部屋とマッサージを頼めばよかった。
と、後の祭り。

長い一日でした。