静謐な温もり |
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2008-09-18 Thu 23:59
今月12日に一歳の誕生日を迎えたannちゃんへのプレゼントを渡すため、目黒でtellと待ち合わせ。目黒に来ると必ず寄りたくなる「こんぴら茶屋」のカレーうどんを食し、近場のタリーズでお茶をしながら他愛のない話や、他愛なくない話。何でも知ってくれているから話せないことがないし、飾る必要がないから本当に楽。有難い存在。
tellも執筆中の戯曲の大筋を掴んでいるので、新しく付け足した設定など聞いてもらいながらブレスト。でも全然時間が足りーず。時間がなかった本当の理由は、もちろん店の名前のせいではなくて、職場の人に強く薦められた映画を品川まで見に行ったから。レビューの評価が非常に高く、何より書いている作品のテーマと相通ずるところがありそうで、何かしらのヒントを得られそうな予感がしたのだ。 ![]() モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞した滝田洋二郎監督の『おくりびと』。北国の澄んだ空の下、月山を望む庄内に響き渡る美しいチェロの音色。夢破れて帰郷した主人公が、ひょんなことから納棺士として第二の人生を歩み始める。脚本も演出も役者も全て素晴らしいが、まず設定の勝利。確固たる死生観を持たなくても、死者を送った経験のある人ならまず泣いてしまう。 祖父母の葬儀で納棺士と会うことはなかったが、もっと早くにこの映画と出逢っていればと思わずにはいられなかった。無宗教、というより宗教自体にあまり関心を持たない多くの日本人にとって、「死」は虚無を連想させ、最も忌み嫌う恐怖の対象なはず。だからこそ「死」即ち「穢れ」と直結して考える。でも、実はそうじゃない。「死は新たな旅立ちへの門なのだ」と、この映画は教えてくれる。死を想うことは、即ち生を思うこと。死を描くことは、生を描くことなのだと教えてくれた、まさに今見るべき映画でした。「静謐な温もり」という言葉がぴたりとくる、是非とも劇場で見てほしい秀作。 |
崖の上のポニョ |
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2008-09-08 Mon 23:59
宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』をレイトショーで。トレーラーと評判から今回はレンタルでいいかなと思っていたのだが、監督の密着番組をテレビで見たり、tellのブログを読んだりするうち、やはり劇場で見たいと思うようになった。
素晴らしい映画だった。ナウシカやラピュタのファンが期待する内容ではないかもしれないけど、製作意図もターゲットも違うわけで、比較して云々言う必要性を感じない。確かに論理的に突き詰めれば納得のいかないところもなくはない。でもそんな大人の理屈なんて取っ払って見るべき映画なんだと思う。デティールやリアリティに拘っていちいちツッコミを入れるのが好きな人には向かない映画。 「どんな時代であれ、5歳の少年から見た世界は美しく生きるに値する」そういう世界を描けていると思うし、同時に警鐘を打ち鳴らしてもいる。手描きの映像は美しいだけじゃなくあたたかくて、悪意の人物は一人も出てこない。余計なことなど一切考えないで童心に返り、あの頃の純粋な気持ちを思い出す。それだけでいいんじゃないかと思った。心躍るようなシーンや胸がきゅんとするようなシーンはいくつもあった。船上のお父さんとモールス信号で交信するシーンとか好きだなぁ。 魚のポニョ、半魚人のポニョ、そして人間のポニョ。どんなポニョも変わらず好きでいられる。それって簡単なことのようで難しいこと。会話さえまともに通じないけど、常に自分の支配下。見てくれは気持ち悪いけど、不思議な魔法を使える。わがままで面倒臭いけど、好みのタイプ。いつからか常に自分の基準で比較して、相手を見定めるようになる。しんどくなったり、自分にとってメリットがなくなったらすぐにポイ。見てくれもよくてお金持ちで優しくて、そんな相手を好きでいるのは簡単なことだよな。 最近のアニメは歌手や俳優を起用してて、それに対して賛否両論あるのは全然構わないが、プロの声優を使わないことに過剰反応する輩が多すぎる気がする。個人的には、この作品のキャスティングは決して悪くないと思う。山口智子なんてハマり役だったと思うし。ろくに作品の評価もしないで、そればかり声高に異論を唱えている人たちって、仕事が回ってこない売れない声優、もしくはその卵なんじゃないかと疑いたくなってしまう。 |
言えない秘密 |
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2008-09-01 Mon 23:59
たった一人の、ほんの一言で、人は宙にも舞い上がるほどの幸福感を得たり、不幸のどん底に突き落とされたりもする。その言葉を発する相手は、受け取る側にとって重要な存在であり、例えば恋人であったり、子供であったり、上司であったり、自分の人生に大きく関与している。でもそれが相互関係である必要はなく、一方的な片思いでも、親権を持たなくても、名前さえ覚えられていなくても、自分にとって絶大な影響力を持った相手なら、その人の言葉には魔法がかかる。祝福か、激励か、はたまた呪いをもたらすものか。発信者が無意識だったり無遠慮だったり、何の罪悪感もなく言ったその一言で、受信者は自分でも信じられないほどの奇跡的な力を発揮したり、それこそ死の淵に立たされることだって往々にしてある。
そんなことを考えながら、極度の緊張を必死に抑えつつ、頃合を見計らって某所に連絡。結果は、なんとも微妙な…。取りようで是とも非とも取れるような、でもどちらかといえば後者なんじゃないかと思われるような対応。結局後日再度打ち合わせをということになったが、楽観視は禁物。 心無い相手の言葉も、不条理な遣り口で追い込まれた窮地も、要は自分の受け取り方次第などと、できた人は言うけれど、それが容易くできるくらいなら、自殺する人はそんないないでしょ。作家でなくてもさ。 ![]() 気持ちを切り替えるために映画でも観ようと思い、レビューで評価の高かったジェイ・チョウの初監督作品『言えない秘密』を新宿武蔵野館で。美しいピアノの調べに乗せたピュアなラブストーリー。と言えばまぁ在り来りだが、前半はまさにそんな感じで物語は進む。鍵を握るヒロインの「秘密」が明らかにされる瞬間、全てを台無しにしてしまうようなまさかの展開。が、そこから結末に向けて、多少矛盾が残る粗さもありながらも、見事に観客を裏切ってくれる。★5つばかりのレビューの評価は、誰かも指摘しているように作為的に仕組まれた感が露骨に見受けられ、正しい点数とは思えないが、でも実際涙腺は緩んだし、劇場を出るときの爽快感もあって、人に薦めたい映画であることは確か。スタントなしで完璧に弾きこなすジェイのピアノバトルのシーンは圧巻。因みにジェイはこの作品、監督だけでなく主演、脚本、音楽まで務めている。 |
大いなる陰謀 |
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2008-08-29 Fri 23:59
ロバート・レッドフォードの7年ぶりの作品『大いなる陰謀』を観た。この邦題には大いに疑問が残る。原題『LIONS FOR LAMBS』をそのまま直訳してもというのは分かるが、サスペンス映画風に見せての客引きは如何なものか。まだ『戦争は会議室で起きてるんじゃない、現場で起こってるんだ!』の方が…いや、それはないか。トム・クルーズの起用にもいさかか疑問が。他に適役がいそうだけど。
政治家とジャーナリスト。教授と対峙する、才能を浪費するお気楽学生、または戦地へ赴く志高き苦学生。各々が各々の立場の象徴的存在として、別個のシーンで討論し合う。キャストとタイトルに騙されて観た人からすれば、あまりに地味で眠たくなる映画だろう。が、個人的にはある部分非常に耳の痛い、されども深く考えさせられる秀作に思えた。 今の時代、世界最強の敵は人間による悪意より寧ろ、無関心にある。政治的経済的環境的諸問題のそのほとんどは、発端こそ別にあれ、それらを助長し、救いようのないところまで悪化させる無関心がガンになっている。間違いなくその一部であると自覚はしているものの、気がつけば目を背け、瞳を閉じて、そのまま眠りについて翌朝には忘れている。 米国より、他のどの国よりも政治に無関心で、誇りやら愛国心を遠い昔に置き忘れてきた日本人。のうちの一人。「正義と平和なら、私は正義を選ぶ」というルーズベルトの言葉に象徴されるアメリカの庇護の下に失ったものの大きさを、そろそろ自覚しないとまずいだろう。 |
ぼくたちと駐在さんの700日戦争 |
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2008-08-22 Fri 23:59
『時効警察』の塚本連平監督『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』を観た。予告編で面白そうだったのと、レビューの評価が相当高かったのが決め手。確かに郷愁を誘いながらの爽やかな笑いには好感が持てるのだが、そんな絶賛するほどだろうか。改めてレビューを読み返しながら、もしかして自分の感性が鈍ってきたのだろうかと不安になる。若干の世代のズレ、原風景となる故郷もさほど田舎ではなく、なにより悪戯好きの腕白坊主というよりおとなしめの優等生だった子供時分が原因かもしれない。と、自分で言ってみる。原作となったブログはかなり面白いらしい。でもこの映画に関して言えば、主役の市原隼人と佐々木蔵之介の力によるところが大きいんじゃないだろうか。
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4分間のピアニスト |
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2008-08-21 Thu 23:59
ドイツアカデミー賞を受賞したクリス・クラウス監督『4分間のピアニスト』を観た。各々悲惨かつ残酷なトラウマを抱えた囚人の天才ピアニストと、年老いた女性教師の二人が、唯一音楽への愛という共通点を起点に、魂をぶつけ合いながら、ぼろぼろに傷ついた人生を再生させていく感動の物語。1200人の中からオーディションで選ばれた新人、ハンナー・ヘルツシュプルングが演奏するラストの4分間は、賛否両論あるようだが、頭でどうこう考えるより胸にビシビシ響いてきた自分にとっては間違いなくアリなのだろう。そして非常に印象的なラストショット。本作品に関しては若干展開に安易なところもあったけど、ドイツ映画は本当に素晴らしい作品が多い。『グッバイレーニン!』や『トンネル』、『ベルリン天使の歌』もそうだし、『ネバーエンディングストーリー』も独映画。『善き人のためのソナタ』は今まで観た映画の中でベスト3に入る秀作だし。話題作ながら未見の『ランローララン』も近々借りてみよう。ドイツに留学して映画の勉強を続けている友人がいるが、文学においても日本と縁ある国だし、大学では折角二外で独語を選択していたのだから、いつか自分もと思わないはずはない。
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非常に不愉快 |
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2008-08-18 Mon 23:59
昨日に引き続き映画。ジェームズ・フォーリー監督の『パーフェクト・ストレンジャー』。「結末を誰にも言わないで」「ラスト7分11秒、あなたは絶対騙される」という触れ込みで、衝撃のラストが約束された(はずの)作品、だったのだが…。推理が全て的中したわけではないものの、犯人は始まってすぐに予想した通り。巧妙というよりただ複雑で強引な伏線によって、懸命に犯人でないように取り繕うのだが、矛盾が破綻を生み、さほど衝撃的でもない結末に少々がっかり。近頃のミステリーって観客を騙すことばかりに躍起になり過ぎ。ハルベリーの演技は流石だと思うのだけど、情欲が強くて下品なキャラに感情移入できず。Bウィリスは完全に脇役。しかもハマってないし。
映画を観ている最中に、とても不愉快な勧誘の電話がかかってきた。一度切ったのにもう一度かけてきて、強気どころか脅迫紛いの失礼極まりない言い草。新手のイタズラ電話なのか。夜中10時過ぎに電話をかけてきて、名前も名乗らず「将来の住まいについて云々…」。なんなんだ、一体。 |
アース |
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2008-08-17 Sun 23:59
『ディープ・ブルー』のスタッフが再集結して作られた映画『アース』を観た。製作5年、のべ日数にして2000日。全世界200箇所での撮影。空を覆い尽くす渡り鳥の群れ。冬眠から目覚めた北極熊親子の旅の始まり。水場を求めて外敵と戦いながら乾燥地帯を行く象。赤道直下の温暖な浅海から南極の餌場まで泳ぐクジラ。CGによる偽装なのではと疑いたくなるほど美しい世界各地の映像の数々。美しい。いや美しすぎる。良くも悪くも。素直に感動もするのだけど、やはり美しい場面しか見せられないことには違和感を覚えずにはいられない。自然ってそんなものじゃないだろう。もっと厳格で、残酷なもののはず。敢えてそこは見せないというのは作為的な演出なのかもしれないけど、だったらラストにお約束の温暖化防止のメッセージを織り込んだりするのもやめてほしい。人間の進化は、本当に進化なのだろうかとか、エコ精神を喚起する動機付けとかそんなこと抜きに、青く美しい地球を堪能するだけでいいのでは。でもそれならやっぱり劇場で見たかった。
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スカイクロラ |
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2008-08-10 Sun 23:59
特に予定もない日曜なのに夕暮れを待たず外出し、近場のファミレスで日没頃まで執筆。ファミレスやファーストフード店の時間帯電源無料貸出が当たり前になるのはまだ先なのだろうか。
創作に息詰まって、雨中甲州街道のリサイクルショップまでドライブ。どう見てもガラクタにしか見えないようなものが、やっぱりガラクタでしかないような扱いで乱雑に陳列されている。これで商売が成り立つのが不思議。 押井守監督の最新作『スカイクロラ』をレイトショーで。森博嗣による全5巻完結の原作、その第1巻を映画化したもの。現アニメ界最高水準のクオリティ、3Gで描く空中戦の映像美は流石の一言。静けさが際立つ音の作り方も素晴らしい。ただ、レビューでも酷評されている声優陣に関しては確かに若干微妙なところも。監督の作為的な演出による部分はあるにせよ、キャスティングが違えばもう少し何とかなったんじゃないかと思わないでもない。 エンドロール後のシーンが象徴的な、主要テーマもメッセージも分かるのだが、それを今敢えて提示する理由はあるのだろうか。曲解とまでいかなくとも、若者たちが抱える負の感情を後押しするきっかけにならないのか。愛の定義について語られたもう一つのテーマについては共感できる。後半眠くなるし、作品として賛否両論あるようだが、原作に続編があるなら読んでみたいなと思う。 |
祭りの夜 |
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2008-08-03 Sun 23:59
夕方までまったりと過ごし、普通のめんつゆ、ごまだれ、バジルソースの3種味で素麺を食べながら、スティーヴン・フリアーズ監督の映画『ヘンダーソン夫人の贈り物』を観た。英国初のヌードレビュー上演に纏わる経緯を、実話に基づいて映画化。タイトルさえ聞いたことがなく、正直期待はしていなかったのだが、とても質の高いエンタメムービー。堅物の英国政府が、検閲の際にその芸術性を認めてしまう件など非常に爽快。大戦中も「SHOW MUST GO ON」の精神で上演を続け、戦士たちに勇気と癒しを与え続けた「ウィンドミル劇場」に胸が熱くなる。劇場のオーナー、ヘンダーソン夫人役のジュディ・デンチの熱演も見所。
白暮の頃、遠くから祭り囃子が聞こえてきた。猫の寄合を冷やかし、亀虫の不意打ちを受けながら、鬱蒼と生い茂る草木の間を縫うように石段を上る。そこには、夜な夜な境内で縄跳びをしたり、風の音を聴きながら空想の世界に浸ったりしている社がある。最近になって「創作の杜」と勝手に名付けた杉山神社の、今日は年に一度のお祭りの日。長年この町に住んでいるのに、この祭りに足を運ぶのは今日が二度目。境内の中央には小さな櫓が立てられ、商店名の入った派手な提灯が吊り下げられている。録音テープと櫓の上で叩く太鼓の音に合わせて踊る人々。カキ氷を頬張る子供たち、ビールを呷る大人たち、一体どこから湧いて出たんだという大勢の住民たちで、狭い境内は活気に満ちていた。祭りとしては非常に小規模で、特に面白みもないけれど、子供時代の思い出の1ページ、もしかしたら恋の1つも始まったりするのかもしれないし、祭り独特の雰囲気って結構好きだな。 コンビニでシャーベットなど買って帰って、ニック・カサヴェテス監督の『きみに読む物語』を鑑賞。『メッセージ・イン・ア・ボトル』などで知られるニコラス・バークスのベストセラーを映画化したもの。『ロミオとジュリエット』的な身分違いのひと夏の恋。当然の如く、二人には別れの季節が訪れる。奔放に生き、相応の相手と婚約までした女。いつか交わした約束を果たした後も、ずっと彼女を想い続ける男。結婚式の直前に再会する二人。女は葛藤の末に初恋の男の元に戻ってくる。設定にも展開にも台詞にも斬新さはなく、いい意味での裏切りも全くない。ただ、そうやって結ばれた自分たちの物語を、老年認知症の妻に読み聞かせる夫という二重構造の図式が、最後にぐっと効いてくる。惜しむらくは、年老いた夫に、若かりし頃イケメンだった面影が重ならなかったこと。奔放に生き、情熱的に恋をして、白馬の王子様は自分だけを待っている。そんな願望を持った女性は好きだろうな、こういう物語。 |
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